55年前に初めて日本にブライダルブランドを立ち上げ、現在も変わることなくブライダル界をリードしつづけるユミカツラ。日本だけでなく世界各国30以上の都市でコレクションを開催、“世界のユミカツラ”としていっそう輝きを増している。
オンリーワンのドレスを求める本物主義の花嫁たちがこぞって着たがるユミカツラのウエディングドレスの魅力とは?
世界中の花嫁が憧れを抱くユミカツラのパーフェクトドレスは常に進化
今や世界中から注目を浴びる、日本初にして現在もブライダルファッションデザイナーの第一人者である、桂由美。もともと彼女の母親が洋裁学校を経営しており幼い頃からデザインに興味をもっていたという。そしてオートクチュールの技術を学ぼうとパリへ留学したのは1960年。女性が海外で活躍することなど夢のまた夢であった時代です。帰国後、教壇にたった桂は学校の卒業制作のテーマを「ウエディング」にしようと決心。この頃、日本の女性たちが「ウエディングドレスを着たい」と思いながらも、97%が着物で挙式している現状を知り、再び海外へ。ヨーロッパ、アメリカなど約20カ国を約1年かけて回り、各国のブライダル事情を調査。中でも彼女が最も感動したのが、パリで見たブライダル専門店でした。
「いつかこのパリで成功したい」その思いを胸に帰国した彼女は、1965年に国内初のブライダルショーを成功させ次々と活躍の場を広げて行きました。そんな中、1981年にはニューヨークでのコレクションのオファーが舞い込みました。世界進出の足がかりを得た彼女は、レース使いの新技術「くり抜き技法」、日本発の新素材「サテンタフタ」の開発、着物のお引きずりから考案した「ユミライン」、釣り糸のテグスを使ったエレガントなテグステクニックなど、世界的にも斬新なアイデアとデザインでアメリカの女性達を完全に魅了。
これをきっかけに、欧米のセレブの注目を集めるようになり、1984年にはロンドン・ブライダルコレクションに参加。翌年には4回目のニューヨークコレクションで当時20才になったばかりの女優ブルック・シールズがユミカツラのドレスをまとって登場し話題となったことも。1987年には、若き日に実現を誓ったパリで初のコレクションを開催。ショーはゲストたちの大喝采を浴び大成功。作家フランソワーズ・サガンから「これほど大胆かつ自由奔放なタッチで我々の夢をロマンチックに表現し得る人は桂由美をおいて他にない」という賛評がよせられるほどでした。
さらに2001年にイタリア最大のオートクチュールファッションイベントにシャネルやアルマーニらと並んで参加した時には、友禅染めや、鹿の子絞り、箔押しなど、日本の伝統美に新しいテイストを加えたドレスを発表。世界中の花嫁から注がれるユミカツラのドレスへの憧れはますます高まり、2003年からは発表の場をパリへと移し、2005年にはシャネル本店前にパリ店をオープンさせ、現在においてもパリコレクションに参加しています。
「花嫁の輝く笑顔を見たい」その思いから始まった桂由美のチャレンジ精神
日本の女性たちの夢を叶え続ける桂由美。全ては「花嫁たちの幸せな笑顔が見たい」という真摯な願いからでした。55年前のオープン当時からオリジナルウエディングを推奨し、1990年代にはすでにガーデンウエディングや船上ウエディングなど、「自分らしいウエディング」のスタイルをいち早く提唱。近年では結婚式離れを防ぐため、結婚式の本来の意味に立ち返るべく「ふるさとウエディング」を推進。これは自宅で花嫁支度をして、ご両親やお世話になった近所の方にきちんとご挨拶をして、居合わせた人達に祝福されながら式場に向かう市民参加型のスタイルです。デザインにおいては、素材への探求心と新技術へのチャレンジ精神を常に持ち続け「素材は世界最高のものを」という当初からのポリシーを貫き、現在でも「どこどこに希少価値のある布やテクニックがある」と聞けばすぐに現地へ足を運ぶといいます。新技術をブライダルに昇華させる想像力も旺盛で、一見ドレスの素材とは誰も思いつかないようなものも彼女の手にかかると見事に斬新なドレスに生まれ変わります。例えば、暗闇で蛍光色に光る「蓄光素材」を使ったマリエを世界で初めて発表し、大きな衝撃を与えたり、LEDを駆使し光のマジックで魅了するドレスを開発するなど、新技術への飽くなき挑戦はとどまることを知りません。
更に2012年には第4回ものづくり大賞でみごと内閣総理大臣賞を射止めた「世界一薄いシルク」によるわずか600gの風を感じるドレスと、ミキモトとのコラボレーションでアコヤ真珠13 262個を最高級のギュピールレースに一粒、一粒、手刺しゅうし、のちにギネスブック認定となる究極のオートクチュールドレスを発表し大きな話題に。また、2015年50周年記念となったショーで発表した世界初となる蛍光&蓄光ビーズを43万個散りばめたグランマリエや、最新LEDライト繊維で作られた7色に光を変える幻想的なドレス、越前和紙とコラボレーションしたダイナミックなドレスなど、素材の特性を生かした作品群は今後のウエディングファッションの限りない可能性を示し観客を魅了しました。以降も他に類をみない美しさでユミカツラの新たな世界感を発表し続け、2018年には、迎賓館赤坂離宮でのコレクションを開催。国宝であるこの建物がファッションに関するイベントの会場となったのは初めてのことで日本初のこととして国内はもとより世界中のメディアにも紹介されました。
昨年7月には、大阪の近代文化遺産である「GLION MUSEUM」にて「CINEMATIC LoveStory」をテーマに和洋の最新作88点を発表しました。クラシックカーが並び映画のロケ地としても利用される趣のあるレンガ創りの建物を舞台に繰り広げられた、ユミカツラならではのショーは、まさに映画のワンシーンのような美しさで観客を魅了し大盛況となりました。
世界中の花嫁を輝かせたい…ユミカツラはさらに世界へ
長年ブライダルファッションの世界を牽引し続ける桂由美。彼女の華々しい活躍は、パリやニューヨークなどファッションの流行発信国にとどまらず、中国やシンガポール、ドバイでも初のブライダルショーを開くなど、今もなお活躍の場を広げ2013年には、アジア・クチュール協会がシンガポールで設立され、コシノジュンコさんと共に創立メンバーに選ばれました。もちろん日本国内においても伝統文化のひとつである和装離れをくい止めるべく婚礼和装業界にも新風を送り続けています。一例をあげると1980年代後半に起こった着物ばなれに際し、花嫁が着物を敬遠する内なる理由に目を向け「白ぬりメイクやかつらが似合わない」と聞けばかつらをかぶらず洋装メイクのままで着られるドレス感覚のキモノを発表。「重いし着付けに時間がかかる」という悩みに対しては、オーガンジー素材を取り入れて、約5kgあった打掛を300gまで軽量化。更に作り帯やツーピース式で着付けが7分で出来る大振袖などを考案してお色直しも大幅な時間短縮に成功し、日本女性に再び婚礼和装の魅力を気付かせてくれました。また、メンズファッションを現在のようにファッショナブルにしたのも桂由美でした。1983年、花婿のワンパターンファッションに対し、ニューテールコートやスペンサースーツ、セレモニーコートを発表。常に「花嫁と花婿二人が主役」といい続け、男性のお洒落意識の高まりも後押しして、花婿ファッションの選択肢を増やしました。これらの長年に渡る国内外でのブライダル業界における功績が称えられ、2010年「全米ブライダルコンサルタント協会」より世界で4人しかいないという名誉会員の称号が授与されています。
2016年には、東京日本橋三井ホールにて、桂由美の半生を舞台化した「桂由美物語」6公演が開催され、また、熊本復興祈念の一環として被災で結婚式をあげられなかった10組のカップルへ桂自身が司式者となり「市民結婚式」をプレゼントしました。この活動は、24年前の阪神・淡路大震災の時から始まり、新潟県中越沖地震や東日本大震災の時もブライダルにたずさわる者として復興の足掛かりの一役になればとの思いから続けているものです。また、2017年には一般社団法人日本文化推進協議会より人々の豊かな生活文化の向上の為、グローバルな意識を持ち意義ある活動を続けているとして「第5回ベスト・プロデュース賞」が授与されました。
今年はユミカツラの創作活動55周年を迎えることもあり、パリコレをはじめ東京や大阪のグランドコレクション開催などブライダルファッションを通じ世界中の多くの人々に新たなる感動を届けるべくユミカツラの活躍は今後も更に続く事でしょう。
桂由美
東京生まれ。共立女子大学卒業後、フランスへ留学。1964年日本初のブライダルファッションデザイナーとして活動を開始。日本のブライダルファッション界の第一人者であり、業界の牽引者的存在。美しいブライダルシーンの創造者として世界各国30以上の都市でショーを行い、ウエディングに対する夢を伝え続けブラダルの伝道師と呼ばれている。1993年、外務大臣表彰を、1996年には中国より新時代婚礼服飾文化賞が授与される。1999年、東洋人初のイタリアファッション協会正会員となり、2003 年からは毎年パリオートクチュールコレクションに参加し、2010年「全米ブライダルコンサルタント協会」より世界で4 名のみの名誉会員の称号を授与。2013年アジアクチュール協会設立の際の創立メンバーに選出されるなど、グローバルな創作活動を続けている。また国内では、2014年に繊研新聞社より「繊研賞」の特別賞、2017年に一般社団法人日本生活文化推進協議会より「ベスト・プロデュース賞」を授与されている。更に2019年には「令和元年度 文化庁長官表彰 」 を受賞している。近著「世界基準の女になる」(徳間書店)「出会いとチャンスの軌跡」(カナリア書房)など。